⑴.なぜ今、業務改善助成金が経営者から注目されているのか
近年、中小企業を取り巻く環境は大きく変化しています。
最低賃金は年々引き上げられ、2025年度も各地域で過去最高水準となる見込みです。これにより人件費負担は増大し、収益力の弱い事業場ほど経営を圧迫しています。
一方で、政府は「生産性向上なくして賃上げなし」という方針を打ち出し、設備投資やIT導入を通じた効率化を強く後押ししています。つまり、「賃金を上げること」と「業務を改善すること」を同時に実現する企業だけが、持続的に成長できる時代に突入しているのです。
しかし、中小企業にとって最もハードルが高いのが「投資の原資をどう確保するか」です。業務フローの見直しやシステム導入には数十万~数百万円の費用がかかり、資金繰りに余裕のない企業ほど実行をためらってしまいます。
そこで活用すべきが 厚生労働省の「業務改善助成金」 です。
この助成金は、事業場ごとの最低賃金を一定額以上引き上げ、そのうえで業務効率化を図る企業を支援する制度です。2025年度も受付が継続され、上限額の拡大や要件の見直しといった改正点も加わっています。
言い換えれば今は、
- 「避けられない賃上げ」への対応を迫られている
- 「業務改善の投資」を後押しする国の支援が拡充されている
この二つが重なる絶好のタイミングです。
業務改善助成金を上手に活用できるかどうかは、単なるコスト削減ではなく、企業の成長スピードと従業員の満足度を同時に高められるかどうかに直結します。
⑵.制度の概要を徹底的に、わかりやすく解説…!
① 概要
業務改善助成金とは、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた時に、生産性向上につながる設備投資等にかかった費用の一部を助成してもらえる仕組みです。事業場内最低賃金とは、事業場で最も低い時間給のことを指し、地域別最低賃金と同様に、最低賃金法および最低賃金法施行規則の定めに基づいて計算されます。
業務改善助成金を受け取るには、事業場内最低賃金の引上げ計画と設備投資等の計画を作成して申請する必要があります。業務改善助成金の交付が決定した後に、提出した計画どおりに事業を進め、その結果を報告することで助成金が支給されます!
② 対象事業者
業務改善助成金は、下記に該当する中小企業や小規模事業者が対象となる制度です。
・事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差が50円以内であること
事業場(1つの職場)での最低賃金と地域の最低賃金を比較し、その差が50円以内でなければなりません。それぞれの最低賃金は申請時のものを参照します。
ただし、事業場内最低賃金とは、6ヶ月以上雇用している従業員の中で、最も低い時給の従業員の賃金です。賃金テーブルなどで定められている最低賃金ではなく、実際の賃金額が優先されるためご注意ください。
そのため、残念ながら事業場の最低賃金と地域の最低賃金との差が「50円を超える」場合は、業務改善助成金を申請することができないためご注意ください。
既に地域別最低賃金よりも極めて高い給与水準で雇用している場合は、対象事業者から外れやすい。逆に言うと、これから賃金アップや人事制度改定に取り組まれる事業者様には、ぜひとも活用いただきたい制度となります!
・解雇や賃金引下げ等の不交付事由に該当しないこと
・中小企業・小規模事業主であること(みなし大企業はNG)
業種 | 資本金額 | 従業員数 | 小規模企業 |
---|---|---|---|
製造業、建設業、 運輸業など | 3億円以下 | 300人以下 | 20人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 | 5人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 100人以下 | 5人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 50人以下 | 5人以下 |
・6か月以上雇用している従業員を対象に、事業場の最低賃金を+30円以上引き上げること
事業場の最低賃金を30円以上引き上げることも条件の1つです。引き上げる金額が大きい、または引き上げる人数が多いほど受給できる上限額も上がる仕組みになっています。
また、単に事業場内の最低賃金を引き上げるだけでなく、引き上げ後の金額を就業規則等に記載する必要があるためご注意ください。
これらを踏まえた設備投資等の計画と、事業場内最低賃金の引上げ計画を立て、期間内に適切な形で申請を行う必要があります。その費用に一定の助成率をかけた金額が、助成金額となります。
③ 対象経費
助成対象となるのは、次のような設備の導入やコンサルティングです。
設備投資等 | 具体例 |
---|---|
機器・設備の導入 | ・POSレジシステム導入による在庫管理の短縮 ・リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮 |
経営コンサルティング | ・国家資格者による、生産性向上を目的とした業務フローの見直し ・業務改善を目的としたDXコンサルティング |
その他 | ・顧客管理情報のシステム化(DX推進のためのシステム導入) ・店舗改装による配膳時間の短縮 ・タブレット型セルフオーダーシステムの導入による注文処理時間の短縮 |
④ 助成金額および助成率
業務改善助成金の助成率や上限額は、引き上げる賃金の額と対象人数、事業場の規模(従業員人数)によって異なります。
助成コース
最低賃金の引き上げ額によって、次の4つのコース区分があります。
コース区分 | 事業場内最低賃金の引き上げ幅 |
---|---|
30円コース | 30円以上の引き上げ |
45円コース | 45円以上の引き上げ |
60円コース | 60円以上の引き上げ |
90円コース | 90円以上の引き上げ |
助成コースに応じた助成上限額
助成コースと、賃金を引き上げる人数によって、助成の上限は次のように決まります。
コース区分 | 引き上げる労働者数 | 助成の上限額 | |
---|---|---|---|
右記以外 | 事業場規模30人未満 | ||
30円コース | 1人 | 30万円 | 60万円 |
2~3人 | 50万円 | 90万円 | |
4~6人 | 70万円 | 100万円 | |
7人以上 | 100万円 | 120万円 | |
10人以上 ※特例事業者に限る | 120万円 | 130万円 | |
45円コース | 1人 | 45万円 | 80万円 |
2~3人 | 70万円 | 110万円 | |
4~6人 | 100万円 | 140万円 | |
7人以上 | 150万円 | 160万円 | |
10人以上 ※特例事業者に限る | 180万円 | 180万円 | |
60円コース | 1人 | 60万円 | 110万円 |
2~3人 | 90万円 | 160万円 | |
4~6人 | 150万円 | 190万円 | |
7人以上 | 230万円 | 230万円 | |
10人以上 ※特例事業者に限る | 300万円 | 300万円 | |
90円コース | 1人 | 90万円 | 170万円 |
2~3人 | 150万円 | 240万円 | |
4~6人 | 270万円 | 290万円 | |
7人以上 | 450万円 | 450万円 | |
10人以上 ※特例事業者に限る | 600万円 | 600万円 |
※印は、「特例事業者」が「10人以上」に対して引き上げを行った場合のみ、適用される上限額です。特例事業者については後の章で紹介します。
助成率
設備投資などに要した費用に、次の助成率をかけた額が支給金額となります。助成率は、申請時の事業場内最低賃金が1,000円未満か1,000円以上かで決まります。
事業場内最低賃金 | 助成率 |
---|---|
1,000円未満 | 4/5 |
1,000円以上 | 3/4 |
計算例
- 事業場内最低賃金:995円 →(1,000円未満)
- 9人の従業員を995円から1,055円に引き上げ →(60円コース)
- 設備投資等にかかった経費は200万円
この例の場合、「設備投資等の費用×助成率」は「200万円×4/5」で、支給額は「160万円」となります。
⑤ 特例事業者とは
業務改善助成金において、賃金要件・物価高騰等要件のどちらかの要件に該当する事業者を特例事業者としています。特例事業者と認められることで、上記のように助成金上限額や助成対象経費の拡大が受けられます。
賃金要件
賃金要件とは、事業場内最低賃金が950円未満の事業者が申請を行う場合が当てはまります。要件に該当することで、助成上限額の拡大が認められます。
物価高騰等要件
物価高騰等要件は、原材料費の高騰等の外的要因によって、申請を行う前の3か月間のうち任意の1か月の利益率(売上高総利益率または売上高営業利益率)が前年同期と比較して、3%ポイント(※)以上低下している事業者が該当します。
特例事業者が10人以上の賃金引き上げを行った場合、助成の上限額が高くなります。
⑥ 申請の流れ
業務改善助成金の申請~支給は、下記のステップで進めていきます。
- 交付申請書・事業実施計画書等を管轄の労働局に提出
- 労働局による審査→交付決定
- 事業(賃金の引き上げ、設備導入・支払い)を実施
- 事業実績書や支給申請書などを労働局に提出
- 労働局による審査→交付額の確定
- 助成金の振り込み
⑶.業務改善助成金の留意点
業務改善助成金の申請や活用にあたっては、押さえておくべき重要事項がいくつかあります。助成金の確実な受給のため、確認しておきましょう!
① 交付決定前に設備導入してしまうと、その時点で受給対象外となる
労働局による交付決定が下りる前に設備導入(納品)や支払いなどを行うと、申請後であっても助成の対象から外れてしまいます。交付決定が下りてから導入しましょう。
② 賃金引き上げの日付に注意
地域別最低賃金の改定に伴って事業場内最低賃金を引き上げる場合、発効日の前日までに引き上げしないと、助成の対象になりません。発行年月日は、地域により異なることにも注意が必要です。
たとえば地域別最低賃金の発効日が10月1日なら、9月30日までに引き上げを行う必要があります。
③ 就業規則への記載が必須
賃金の引き上げについては、引き上げを実行するだけは不十分です。就業規則や労働協約に、引き上げ後の最低賃金を記載することが必要です。
④ 過去に受給済でも申請可能
助成金の中には、過去に受給した事業主を対象外とするものもあります。
しかし業務改善助成金は、過去に受給している場合でも助成対象となり得ます。積極的に検討してみてください!
⑷.最後に
業務改善助成金は、賃上げと業務効率化を同時に実現するための強力な制度です。
しかし「どのような改善投資を計画すべきか」「どのシステムを導入すれば最大の効果が出るか」を自社だけで判断するのは難しいのが実情です…。
当社では、kintoneを活用した業務設計・導入・定着支援を通じて、助成金を効果的に活かすためのサポートを行っています。
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